桐の花。

中央線の快速電車の車窗ヵラ、流れる景色をぼんやりとながめてゐると、市ヶ谷の濠端の土手に植ゑられた桐の竝木に薄紫色の花がいつぱいに咲いてゐるのがみえた。
濠を隔てた對岸にあつても、そのおほきく特徴的な花辨は、手に取るやうにハッキリしてゐる。竝木がまだ立ち枯れたやうに葉を落としてゐた冬の日の明け方、土手のうへの道を西に向かつて歩いて歸つたのを想ひだした。
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*1:表題は、頭の中でかゝつてゐるうた。
 「カルメンマキ&OZ」の看板曲だつた「私は風」のなかの一節。1975年のデビュー盤のB面最後の曲。このレコードは隅々まで記憶してゐる。たぶん兒供の頃に聽き過ぎたのだ。