誤報だつた模樣。

◎聯合國文件廢繁體字? 2008改用簡體為唯一標準
 http://tw.news.yahoo.com/060324/15/2yx0t.html

…は、誤報だつた模樣です。(→


◎聯國廢繁體字? 烏龍啦
【聯合新聞網 ニューヨーク特派員 傅依傑/10日電】
http://tw.news.yahoo.com/060411/15/30tcm.html

先日メディアは大陸の學者の言説により、國際聯合の「決定」として「2008年以後に簡體の中國語のみを採用して國際聯合の公用語とする」つまり繁體字を廃して簡體字を用ふこと傳へた。このことが廣範にわたつて關心を持たれたことにより、繁體字/簡體字の爭ひを誘發して再燃させることゝなつたが、實はこの報導は誤りだつた。


まず、もつと以前の1971年に國際聯合の代表權が中華民國から中華人民共和國に代つた後に、國際聯合はあたらしく成員國となつた中華人民共和國の國語の習慣を尊重し、それに基づいてすぐに國際聯合の體系内で流通する中國語を繁體字から簡體字に變更してゐた(同じ理由から1971年以前に流通してゐた中國語は中華民國を尊重して繁體字だつた)。そのため1971年以降にはすでに簡體字の中國語が國際聯合での正式で唯一の中國語のバージョン(版本)だつたのだ。つまり繁體字/簡體字の竝存する状況はもともとなかつた。


その次に、注意すべき點は國際聯合は中國語の繁體字/簡體字の問題を議題として採りあげる立場にはないといふことだ。外部での政治問題を持ち込むべきでないからだ。前段に示した通り、國際聯合は1945年~1971年の間繁體字を、そして1971年から現在まで簡體字を使つてゐた。國際聯合(正確には國際聯合の亊務局)に據れば、いつでもその時の成員國(中華民國、或は中華人民共和國)の國語の習慣を尊重するのだとする。つまり國際聯合の亊務局では、そのどちらかをを擇んで決定する立場にはないといふことだ。そのため、外傳にあるやうな、國際聯合が「2008年から簡體字の中國語を統一して使ふ」といふことを「決定」するといふことはありえない。この話では國際聯合の公式の言語に對する運用方針を理解してゐないことがあきらかだとした。


國際聯合の亊務局の中國語の部署に所屬する現任のベテラン職員である劉達政と、すでに退職してゐるが30年のキャリアがある花俊雄の雙方ともに、この國際聯合の當局による「2年後には簡體字だけを採用する」といふ「決定」を「聞いたことがない」とし、このやうな噂は「デマ」だと指摘する。なぜなら國際聯合ではこれまでにもこの種の決定は存在しないし、常識に據つて判斷すれば國際聯合がこのような決定をすることはありえないことだとした。更に重要なのは、國際聯合が35年にわたつて簡體字を唯一の「バージョン(版本)」としてきたことで、そのためこのような決定をする「必要がない」といふことだ。


國際聯合では現在5種類の言語(英語、中國語、フランス語、スペイン語、ロシア語)を公用語として、また業務上6種類の言語(5つの言語のほかにアラビア語が追加される)を使つてゐる。全世界では13億人を上囘る人びとが中國語を使ふが、しかしそれを以て國別の數として論ずることはできない。國際聯合内で中國語を使用する國家は主として中國に限られることから、中國語は最少のグループに屬するといへる。このため嚴密には、中國語が國際聯合で使用/流通される度合はそれほど大きくはなく、通常は英語を使用するのだといふことだ。國際聯合は「規定に從つて」5種類の公用語による文件を坦々と公布するのみだといふのが眞相である。


ニューヨーク駐在の國際聯合の亊務官員は、この噂についての眞僞を知つてゐたはずだが、それを終始あきらかにすることがなかつたのは、必要以上に噂が廣つて職務上の過失とされることを嫌つたものであるやうだ。

↑※eulearによる稚譯。


(※參考 : 中國の國際聯合における代表權の變遷について。1945年10月に國際聯合が發足した當時は國民党政權による中華民國に代表權があつた。ニクソン大統領による合衆国の對中國共産党接近政策により、1971年10月、中華人民共和國*1が、中華民國*2に代つて國際聯合での代表權を承認されるに至つた。)

*1:華人民共和國(PRC) : 簡體字を使つた中國語を採用する政府。1949年10月、中國共産党により北京で成立を宣言した。

*2:中華民國(ROC) : 從來の儘の繁體字による中國語を維持する政府。1949年12月、共産党政權の政府との對立から臺灣に據點を移した。