今更の話題だがこれをベストとする。

アロハロ紺野あさ美寫眞集のベストカットは表紙のカバーかもしれない。
室内撮りで螢光燈の緑被りをしてゐるのを敢て補正しないで表現したのが非常に印象的だつた。
これは設定された筋書きからすると誤讀となるのだらうけれど「高校3年の最後の學期のある日のこと、春の前線の影響で翳りがちの天氣が續いてゐて外はまだ稍々寒い*1のだけれど、螢光燈が點された午後の教室は暖かくて進路が決まつてしまつた今となつては授業も教科書の殘つた部分を流す程度のもので、ついついまどろんでしまつたり...」と、いふ雰囲氣でひとつ讀むこともできる。
別の流れでは、たぶんこちらが用意されたストーリーなのだけれど、卒業後にハワイ(?)の留學先でぼんやりと高校生活を振り返つてゐるやうでもあり、これはセーラー服で「日本の」教室で佇んでゐるカットへと繫つてゐる。服裝からみればもちろんこちらが正答なのだらうけれど、この螢光燈の色のおかげでいくつもの物語りを讀み解くことができる裝置として機能し得るやうになつてゐる。
他にもこの螢光燈の下での同じ場面でのカットが數點が挿入されてゐることから、この寫眞集はこれを軸に樣々な時空が繫ぎ留められてゐるやうに見受けられる。
まあこれを擇ぶのは、書店に竝んでゐたときの強い印象が忘れられないといふのもあるが。

*1:この點は、通學鞄を確りと兩手に抱へて頬に押し當ててゐるカットにより推し量ることができるだらう。このカットも好き。