1994年9月の初旬、我々は仙臺にゐた。驛ビルのなかにあるミュージックストアには紺碧の壁が築かれてゐた。"ATMIC HEART"は話題の新譜だつた。この「ミスチル」のアルバムに收められた或る歌の一節に、私の住む街の名が織り込まれてゐるのに最近になつて氣付いた。この街のアパートで二羽のインコと暮す僕−このパッとしない感じは、この土地の冱えない氣氛に如何にも相應しい。今更ながらちよつと痺れた。その當時は別の街に住んでゐたから氣にも留めなかつたのだらうけれど。ところで、この街に遷り住んでから旅行をしなくなつた。あれほど頻繁に訪れてゐた仙臺にも行かなくなつて久しい。