日記。

夕刻、河原の土手を五本松から和泉の鐡橋方面に向けてブラブラと散歩してゐると、高校のグランド近くの土手の縁に三脚を立てた寫眞家の群れが一線に竝んでゐるのに出くはした。對岸をのぞんで皆が等しく鏡筒の砲列を一點に向けてゐる。珍しい渡り鳥でもゐるのかしら‐と、おもつたのだけれど、狙つてゐるらしい方角を目で追つてみてもそれとおぼしき對象は見當らなかつた。それよりも夕映えのなかにシルエットで浮かびあがつた對岸の松竝木を撮らうとしてゐるのかもしれなかつた。傾きだした紅の陽はスルスルと文字通り釣瓶を落とすやうな速度で化学繊維工場の彼方にみえる山の端にかゝつて缺け始め、アッといふ間に沈んでしまつた。最後の光點が消えると同時に企圖してゐたかのやうに5時の鐘が一齊に鳴りだしたのでビックリした。*1

*1:寫眞家の視點に關する預想はすべて外れてしまつたが、落日が被寫體として意外におもしろいことを知つた。偶々携帶してゐたセミ判のエンサインでは、缺けた陽を2コマ撮るのがやつとだつた。