TRACK8
ラジオから聞こえて來るみたいにローファイに響くウッドベースのラインに、スパニッシュふうの凾鳴りのするギター。拍裏を打ち續けるハーフオープンのハイハットシンバル。…などゝ竝べて行くと、まるで生演奏の樂團でも付いているみたいだが、實際にはオケはすべて打ち込みらしい*1。そのことを裏打ちするやうに樂曲全體を間斷なく埋めるタップのやうなクラップ音は正確無比なテンポで刻まれていて、まるでヘッドセットのモニタから流されるドンカマのクラーベ音さながらの非情さだ。情熱的なはずのラテンのリズムが不思議な生氣の無さで淡々と打ち出されている態は、正にカラゲンキみたい(!)。悲愴な趣きの旋律にもかゝはらず、それだけの表現で終つていないのは、疊み掛けるやうな受け渡しで繋がつて行く四聲それぞれの際立つた個性から來る表現の幅の饒さによるだらう。心内の苦悶を感じさせるやうな翳りのある吉澤さんの聲の表情から、その心の軋みが爆發的に表出されたかのやうに突き拔けて來る紺野さんの金屬的なハイトーンに到る邊りは本當にゾクゾクとさせられる*2。それは防潮堤を越える程に高まつて來る海嘯の波頭に似て。