プール・サイド小景。

コス・プレイヤ選手權(?)の行列を尻目にゲート脇を左に折れて坂道を登つて行く。抛ち棄てられたオイル・プラントの廢墟みたいなウォーター・スライダーのパイプ群が頭上で複雜に絡み合ふ一郭を過ぎると急に目の前が明るく開けた。シーズン前の「流れるプール」はまだ空渠で水の表面に遮られてないせゐか青色のペンキが塗られたハーフ・パイプの床まで意外な深さを感じる。その奈落の端を匯つて細い通路をぐるりと拔けて行くと行手に目指すべき屋内蹴球場と思しき屋根が低くみえて來た。手前にロープで幾つかのブロックに仕切られた廣場があり區劃の一隅に「待つ」人々がゐた。偖て間に合つたものかと俄かには判じ得ない儘にその最後尾へと自分も着ける。さうして手近の者に状況を訊ねてみたが何だか瞭りとしない返答。小時あつてから係員によるアナウンスは擴聲器もなくて聽き取り難かつたが「…終了」との意は拾へた。どうやら定數の100名は既に場内に這入つてしまつてをり我々はその殘餘であつたものらしい。解散を命じられて大人しく散々となつた皆の衆はプール・サイドの先刻來た径をゾロゾロと後戻りすることゝなつた。自分もさうだつたけれど同志たちは駄目を打つことになるのを預め承知で馳せつけたかのやうな印象だつた。アブレ者には應援の記帳とかゞ出來たらそれも良かつたかもしれないけれど空手で黙々と歸るてのも乙で良い感じがした。