11日未明。

眞夜中に雷が近付いて來た。發光の度に照らされる北西の空の色は淡いイエローオーカーなのに、室内ではそれが水中の蒼みを帶びた白色にチカチカと反射する。まるでタングステン光用のフィルムを白晝に誤用したみたいな風景が切れぎれに顯れる。眠りが淺いのはたぶん不規則な時間に仕事をしてゐるからなのだらう。窗外を見下ろすと雨が降るなかで深夜のジョギングをしてゐるひとがゐる。雨滴はまばらだが粒が大きくて、ときどき落下して來る冷風とともにザアッと吹き付けたりする。濕氣を多く含んだ空氣には海の匂ひが微かにするやうだ。額に貼り付く前髪を測つてみると、サロンに行くべき時機をすこし過ぎてしまつたことが判つた。