ドラマのはなし。

まうテレビはみないなんて以前に書いたけれど、電視劇「結婚できない男」はみてゐる。阿部寛が主演のドラマは可能なかぎりみることにしてゐる。セクシアルな表現に全く頼ることのない(それが"戀愛"そのものを扱ふものであれ)彼のドライな演技には非常に魅かれる。稍々不自然な擧動にも關はらず、逆に作爲的な厭らしさを感じさせないのは何故なのだらう。
今囘のおはなしでは、一見すると隣家のお孃さんとの接近(乙女心は好感を戀と讀み替へる)が主題であるかのやうにみえるが、實は設計事務所の男の子が見せる桑野氏に對する共感(理解の深さ)と、さうした周囲の理解によつて自分が支へられてゐたことに氣付きはじめたらしい桑野氏の心中の變化(但し、説明的な描寫はない)が重要なポイントとなつてゐるのだとおもふ*1。次囘は最終話。女醫と結婚する結末なのかなともおもふが、彼女の心がどう動くとさうなるのかといふ邊が見どころだらう。まあ預想は預想でしかないが。*2 *3

*1:毎囘、ほゞ同じやうに一瞬だけ出て來る、CVS(いつもの店員)、貸ビデオ屋、キッチン、バー、漫畫喫茶(こゝだけ桑野氏のテリトリーではないのだが、それでも常に"噂話"として彼は存在し續ける)、ライバルのウヱブサイトとスポーツカー、妹の家庭と母親、隣人の飼犬、そして診療所と結婚しない(できない)女醫、などなどなど... これらがグルグルと囘り續ける態は、ひと昔前の"ホームドラマ"の手法そのものであるかのやうだが、しかし何かゞ決定的に違ふ。登場人物は誰ひとりとして感情を顯はにすることはなく、皆が揃ひも揃つて假面のやうな皮肉な笑みを互ひに向け合つてゐる。ストーリーはかうした表面とは別に常に水面下で靜かに且つ大胆に展開して行く。

*2:とか何とかいつても、やはりテレビは好きぢやないので、實は割と漫然とみてゐたりする。だから役名やら何やらはウロ憶えなので、正確な評を書くことは叶はないのでした。お粗末樣でござんす。

*3:最終話についての記事も少し書いた→http://d.hatena.ne.jp/eulear/20060920#p1