TRACK10

5フレット目のAmmaj7、オーヴァードライヴのかゝつた上向の分散和音をひとつ響かせて唐突に始まるアルバム終曲「キスしよう」は、ローズピアノとチープなオルガン音を絡めた、音程の振り幅が大きいブルージィなメロディが印象的な、ピンキー姉妹(?)によるデュエットの小品。ふたりの歌手は聲調をソックリに揃へているので例のリニア歌唱法と相まつてやゝもすると迷宮のなかへと誘はれたりもするけれど、どつしりとしてブレ無くのびる石川チーフの聲と倍音の暴れ方に魅力がある小紺の聲の違ひは聽き込むほどにだんだんと際立つてくるので、そんなところがまた非常に興味深い點だとおもふ。アルバム全體を通して延々と續く打ち込みリズムにちよつと疲れてしまつたところで最後に飄々と打ち出される生バンドのリズム體の空間感は清々しく、音樂が終つたときの心地良い物足りなさとともに再びプレイボタンに指を伸ばさせる誘惑を祕めた佳曲となつた。