無題

最初に持つた「自分の」カメラはPEN-FTの38mm/f1.8付で、祖母からプレゼントされた物だつた。小學生の玩具としては分不相應な代物だつた氣がしなくもない。現像の手傳に託けてレイヨグラフみたいな暗室遊びをしてるのを「どうせならトータルでお遣りなさいな」と勸めるつもりで與へて呉れたのかもしれない。露出計の使ひ方が下手糞で、結像粒子が流れ落ちて像の乘りが淡い-露光不足の-寫眞ばかりが撮れた。パトローネにぎりぎりまで充填すると80齣くらゐになるのを「72」までしかないカウンターは疾うに振切られてるものだから氣付かずに捲き上げ過ぎてフィルムを千切つてしまつたりとか、無茶を結構した。作畫への取り組みが何時迄も甘くて、退屈な説明調を脱却することがなかなか出來なかつた。ラボを自由に出來るうちにもつと死ぬ氣で遊んでおくべきだつた。このカメラは大學生のときに交際相手との喧嘩中に抛つて壞した。