無限定的夢幻共同體。

アイドラトリーの構造を活性化させ、そこに關係する者達すべての時間を美しく好ましい記憶としてその後にまで持續する爲に留意すべき點は、拝跪する者と偶像たる對象が關與する場においては相互に「共同」の意識を持つて眞摯に事に當るべしといふことだ。與へられるまゝに奪ひ續け、時が來て擲げ出してしまつた後は忘却するのみといふ關係では、どちらにとつてもたゞ時間を浪費したことにしかならない。我々は「大きな名前」の付いた囘旋塔に單にブラ下てゐれば好いといふわけではなく、この機械構造を夢幻の生産裝置とする爲に、そこで運動の方向を決定し、囘轉の速度と圓錐の振れ幅を制御しながら地面を蹴り續ける必要があるのだ。この場合、軸となる塔こそが虚像なのであり、そこに名を貸し或は投影された者もまた塔の天邊に鎮坐してゐるわけではない。彼もまた實際には錐の下邊で周縁の欄棒を握つてゐる運轉者のひとりなのだ。