日記。

横毆りの激しい雨で、傘を差してゐても大した役には立たない。驛までは徒歩で20分程もかゝる。それ程の時間をこの雨のなかで歩き續ければどうなつてしまふかは、自宅の階下からすぐのバス亭まで出ただけでも略々察しは付いた。しかし何れ雨滴の吹き込む待合所で何時來るのかも判らぬバスを待つのは面白くないので、結局歩いて行くことにした。
…後悔とは文字通り「後で悔やむこと」であるやうだ。道程の半分も進まないうちに濡れ鼠となつてしまつたのだが、まう戻ることも出來ない。驛に着いてから、動物のやうにブルブルと體を揺つて丹念に水滴を落した。電車は空いてゐたけれど、坐ると席を濕らせてしまふから、新宿までずつと通路に立つたまゝだつた。
(※10/18,メモより復元)